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嵐の中の合格発表
胸の内で膨らみ続ける期待と不安が、喉を伝って漏れ出してしまいそうで、男は口元を手の平で覆った。
会場へ向かう足取りは、借り物の下駄で行くがごとくにおぼつかない。
空には晴れ間が見えているのに、雨粒やら氷の粒やらが頭上に降り注ぎ、ならばと傘をさしたなら、途端に止んで光が差し込む。
自分の胸の内を天に見透かされ、からかわれているような気がして男は頬を掻いた。
会場へと続く坂の登り口では知った顔の同業者がビラ配りをしていたが、男は何食わぬ顔でその横を通り過ぎる。
坂の途中には男と同じような、絶妙な面持ちをした親子連れが何組か歩いており、誰もかれもが言葉を発することはなく、その視線はただアスファルトをなぞっているようだった。
『彼らがこの坂を降りるときにはきっと、満点の笑顔でありますように』
男はそう祈りながら、いくらかさみしくなった前髪を掻き揚げて、ちらりと曇天を仰いだ。
会場は例年と比べると人の数が少なく、空の具合のせいか、いくらか景色が色あせて見える。
男は人の群れの後方から辺りをしばらく見回したあとで、自分の生徒たちが肩を寄せ合っているのを見つけておずおずと歩を進めた。
緊張を隠すために笑顔を造り、生徒やその保護者と軽い会釈をかわすと、向き直ってまだ何もない校舎の壁を眺めながら、その時を待つ。
生徒たちの幾人かは潔のよい面持ちで何やら言い合っていたが、一方で男には耳鳴りしか聞こえていなかった。
この一年、行くな進むなと喚いても瞬く間に過ぎていった時間を恨めしく思っていた男だったが、このときに限って、その左手首に巻きついた腕時計の針は遅々として進まない。
やがて、右手の建物から面長の看板を抱えた男性が三人出てくる。
看板も三つ。
それらが校舎の壁に立てかけられると同時に、辺りが静かにどよめき始める。
看板にずらりと並んだ受験番号。
それを確認した者から順に、悲鳴にも似た歓喜の声をあげはじめ、その叫びはやがて会場を覆い尽くす。
男はただでさえ長いその体をさらに伸ばしてみるも、人垣に阻まれて看板を隅々まで見ることができずにいた。
じれったく思い、ついには飛び跳ね始めたあたりでやっと目当ての番号を見つけると、不安そうに背を伸ばしている生徒の一人の肩を叩く。
「おい、あるぞ。君たちの番号がある」
男は思わず、無粋にもネタばらしをしてしまうが、生徒たちはそれを信じることができず、人垣を分けてなんとか看板の前にたどり着く。
と同時に飛び跳ねながら戻ってくると、互いに肩を抱き合い、その身に降り注いだ未体験の幸福感に打ちのめされるように、頭を下げて声にならない思いを零す。
ある者は一年の苦労を思って感涙を流し、またある者は自分の力をもってすれば当然だと胸を張る。
それでいい。
たとえその栄誉の先に新たな苦難が待ち受けているとしても、今日この時ばかりは彼らが主役で、彼らを中心に世界が回っていなければならない。
男はその場で見つけることの出来たすべての生徒たちの破顔を確認し終えると、保護者への挨拶もそぞろに急ぎ足で自分の校舎へと戻っていった。
会場で見つけられなかった生徒たちに電話をし、軒並みの吉報を得たが、男は依然として不安げに窓の外を見つめるばかり。
まだ二人足りない。
男女一人ずつ、合格していればすぐに連絡をくれるであろうはずの生徒からの音沙汰がないのだ。
ひょっとすると、あるいは……。
電話機を眺めたり、窓辺に立ったりと落ち着かない。
男が気持ちを切り替えようと、各所への連絡のために携帯電話を覗き込んでから間もなくのことだった。
何者かの気配を窓辺に感じてふと目をやると、ガラスに黒い人影がべったりと張り付いている。
驚きの余り思わず男が立ち上がる。
しかし、その人影が両手を頭の上に掲げて輪となしていることに気付くや否や、男は猛然と校舎の外に飛び出した。
小説風に書いてみましたが、もう飽きました。
この拙文をここまで真面目に読んでくださった方はきっと良い人だと思います。
いやはや、M君とNさんからの連絡がこなかったから、めっちゃ心配したよ!
西も東も八頭も、みんな合格おめっと!
蓋を開けてみれば、皆相当点数高くてオーバーキル状態。
圧勝だったな!
今日はいい夢見れそうです。
いや、昼間にはすでに吉報の連続で夢心地だったけどね。
卒業生の皆さん、保護者の皆様、一年間、本当にお疲れ様でした!